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2018年3月13日、グラン ジュール ド ブルゴーニュの会期に合わせ、フランス・ボーヌに本拠地を置くブシャール ペール エ フィス(以下、ブシャール)の迎賓館にて、 銀座の鮨の名店鮨からく店主の戸川基成氏を日本から招聘し、「Sushi & Wine Pairing Dinner」を開催しました。
ボーヌに拠点を置くブシャールで、世界各国からのワインジャーナリストへ鮨とブルゴーニュワインを味わいペアリングの新しい可能性を体験してもらいました。
※グラン ジュール ド ブルゴーニュとは、2年に1度開かれるブルゴーニュワインの見本市。ワイン業界関係者のみに、ブルゴーニュワインを一足先に試飲してもらおうとブルゴーニュワインの栽培家が始めたもので、2018年で既に14回目を迎える。

  • 戸川 基成氏(鮨からく 大将)
    戸川 基成氏
    (鮨からく 大将)
  • ファブリス ソミエ氏(ジョルジュブラン ソムリエ)
    ファブリス ソミエ氏
    (ジョルジュブラン ソムリエ)
  • ジル ド ラルズィエール氏(メゾン ドメーヌ アンリオ 社長)
    ジル ド ラルズィエール氏
    (メゾン ドメーヌ アンリオ 社長)
  • フレデリック ヴェベール氏(ブシャール 醸造責任者)
    フレデリック ヴェベール氏
    (ブシャール 醸造責任者)
アペリティフからスタート
アンリオ ブラン ド ブランに合わせて日本やフランスの食材を調達し、江戸前風にアレンジしたオードブル。シャンパーニュの複雑味からくる味わいの多様性により、どの料理ともそれぞれ良い相性を見いだしていました。

フォアグラの細巻き / 特製出汁巻き卵 / いくらの軍艦 / サーモンの裏巻きとび子乗せ / ヤリイカのキャビア乗せ(柚皮と赤ワイン塩、ライムの果汁がかかっている) / ヤリイカと交互に、白ワインと砂糖で味付けしたエビをあしらう / 牛ヒレ肉の漬け鮨(トリュフかけ)

Sushi & Wine Pairing Dinnerでご紹介されたマリアージュを戸川氏、ソミエ氏、ヴェベール氏のコメント共にご紹介します。
※下記コメントは、会場でお話された文言でそのまま掲載しています。

  • マリアージュ_1
    コルトン シャルルマーニュ2012
    × サラダ、カンパチの握り、鯛の昆布締めの握り
    • 戸川氏:カンパチは白ワインにつけて、脂の旨味を引き出しています。漬け込むことで白ワインの風味がコルトン シャルルマーニュの香りと同調し、鯛の昆布で締めたミネラルの旨味を添加した鮨は、コルトンのヨード香、塩味のようなフレッシュなミネラル感と同調します。

      ソミエ氏:このマッチングはとても興味深く、緊張感を持ったマリアージュ。ワインの鉱物的なミネラル感、料理の塩味、素材から来るヨード感と同調しています。コルトン シャルルマーニュの土壌が生み出す鉱物質、フレッシュ感、カレーなどの刺激的なスパイスのニュアンスなど、似た者同士が醸し出すマッチング。
  • マリアージュ_2
    ムルソー ジュヌヴリエール2010
    × カニとトマトのミルフィーユ、鯛とゴマの醤油漬けの
    握り、ホタテの昆布締めの握り
    • 戸川氏:ゴマ醤油に2日間マリネした鯛のゴマの風味と、樽の利いたシャルドネの風味がマッチ。ホタテの昆布締めのミネラル感のある旨味が、ふくよかな甘味のあるムルソーと相性が良く、旨味の濃い甲殻類とトマトの酸味もムルソーと同調します。

      ソミエ氏:2010年のムルソー ジュヌヴリエールはまろやかさと旨味が特徴。同時に、石灰質による緊張感があり、まろやかさとの対照を楽しむことができます。鮨の塩味やミネラル、カニの脂肪やまろみがムルソーのまろやかさや旨味と相乗効果を生みます。料理、ワインともにそのよさを消し合うことなく、口中で味わいを主張しています。
  • ワイン解説(ヴェベール氏)
    2012年ヴィンテージは、非常に造りにくい複雑な年でした。2月には春の霜の被害や、6月にはヒョウも降り、収量は減ったものの、その後の天候に恵まれ、秋の収穫時期には、円熟したブドウを収穫することができました。このコルトン シャルルマーニュは、標高280mの東向きの傾斜で育つため、非常に難しい年であっても凝縮度の高いブドウを収穫できます。土壌は、黄色い粘度と、その下にある石灰岩の土壌によって、フレッシュさと、ミネラル感の表現があるワインに仕上がっています。
  • ワイン解説(ヴェベール氏)
    2010年は思い出深い最良の年。100以上のアペラシオンを持つブシャールの一つひとつの畑で、すべてにおいてその個性を遺憾なく発揮した素晴らしい年。収穫期の直前に降った雨でさえも、この特別なストレスがかかることによってピノ ノワール、シャルドネの他の年にはない素直さを表現する独特の風味をもたらしました。標高の高いところ、傾斜面の最良の2区画からもたらされるブドウには斜面による力強さや寛大さ、まろやかさ、高地の石灰質からくるフレッシュさがあります。それらをブレンドすることによって、ブシャールのジュヌヴリエールを特徴づけているのです。
  • マリアージュ_3
    ボーヌ デュ シャトー プルミエ クリュ ルージュ2015
    × 魚介のバジル和え、中トロの握り、トロ炙りの握り
    • 戸川氏:日本では一般的に、鮨というと白ワインを合わせることが多いですが、私はマグロや中トロにはぜひ赤ワインをお勧めしたいです。本日のトロには赤ワインでつくった塩をふりかけているため、塩が赤ワインの果実味を引き出し、甘さを感じさせてくれるでしょう。

      ソミエ氏:赤ワインの成分であるタンニンの渋味を理解したマッチングです。また、ヴィンテージの特徴である若々しさやフレッシュ感、さくらんぼの特徴、青野菜のような植物性を、対照的なトロの脂や旨味、熟成感と合わせています。まさにまろやかさとフレッシュ感を両立させ、それぞれを補完し合う合わせ方。時間をかけて吟味し、楽しんでほしいです。
  • マリアージュ_4
    ボーヌ グレーヴ ヴィーニュ ド ランファン ジェズュ2010
    × サーモンマリネ、マグロの醤油漬け握り、かんぴょう
    の握り
    • 戸川氏:マグロの赤ワイン醤油漬けの醤油からくる塩味と旨味、熟成感が、ワインに同調。また、サーモンやマグロの持つ鉄分が、ボーヌのピノ ノワールの官能的な味わいにぴったりと寄り添います。醤油、砂糖、みりんがしみ込んだかんぴょうと海苔のヨード感、シャリの酸味の三位一体の味わいが、しなやかなランファン ジェズとよく合います。

      ソミエ氏:ブシャール家の象徴的なワイン。このワインは「ボーヌのワイン」ではなく、「ランファン ジェズのワイン」と言えるほど、傑出した特別なワイン。口中の広がり、円熟さが特徴的。時間とともに表情の移り変わりも楽しめます。赤ワインと醤油が利いたリッチなマグロの漬けの旨みと、豊満なワインが見事な相性を見せています。タンニンを、相反する塩辛さが補完し、ワインにまろやかさや甘みを演出しています。
  • ワイン解説(ヴェベール氏)
    2015年ヴィンテージは2005年と同じく、新鮮さと円熟が出た年。ボーヌの17のプルミエ クリュの区画ごとにワイン造りを行い、これを最後にブレンドすることによって、17区画の一つひとつの個性や風味を生かすワイン造りをしています。そのため、多様な個性が顔を出す複雑性がこのワインには生まれています。
  • ワイン解説(ヴェベール氏)
    「幼子イエス」という名のこの畑の歴史は、17世紀に遡ります。ルイ14世の時代にはカルメル派の僧院が所有し、フランス革命後にブシャールが買い取り、現在に至ります。ボーヌのなかでも、突出して素晴らしい区画。小石と砂が中心で水はけがよく、他にない特別なスミレの香りや皮革、スパイスの香りも現れます。また、このワインは造りも手が込んでおり、タンニンを抽出しすぎないように細心の注意を払って醸しを行っています。
  • マリアージュ_5
    ル・コルトン1967、マグナムボトル
    × ブリの照り焼きフォアグラ添え、穴子の握り、
    鰻の握り
    • 戸川氏:ブリの甘みとフォアグラの脂からくる旨味と、ワインの熟成からくる旨味が相乗効果を生むマリアージュです。うなぎの香ばしさや複雑味ともマッチします。

      ソミエ氏:1967年は、猛暑で、ブドウの持つすべての要素が凝縮した年。チョコレートやカカオなど、多様な香りが広がる「幻の伝説的ワイン」と呼ばれています。熟成による旨味がブリやうなぎ、穴子の旨味と調和しています。偉大なワインはワインだけで楽しむこともできますが、このように料理との素晴らしいマリアージュが実現すれば、さらにワインの楽しみが広がります。
  • ワイン解説(ヴェベール氏)
    1967年は干ばつで収量が少ない年でしたが、その分、ブドウの濃縮度が高くよく熟しました。早くに収穫して過熟させなかったために、酸もあり、同時にタンニンもしっかりと出現してくれました。これらの条件が、このワインを長期熟成可能なものとし、50年の時を経ても輝きが衰えないワインとなっています。
※ファインズブログでもイベントレポートをご紹介しています。前編/後編

前編 https://www.fwines.co.jp/blog/2018/000209.html
後編 https://www.fwines.co.jp/blog/2018/000210.html