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アンバサダーが導く「アンリオトリロジー」の世界

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生産者との出会い アンリオ、フェーブル、ブシャールで状のソムリエが現地フランスで出会った生産者たちの想いを届けます。
Domaine Bouchard Pere & Fils 第1回「アンリオ家の登場〜新醸造施設の建設まで」

情野氏 ブシャールシャトー前にて
情野氏 ブシャールシャトー前にて

ブルゴーニュの中心地、ボーヌの町の中心部に位置するドメーヌ ブシャール ペール エ フィス(以下ブシャール)の社屋を訪問。中世の時代軍事用の要塞として使われていた建物をブシャール家が購入し、現在はオフィス兼瓶熟庫として使用している建物。今も昔もブシャールの拠点でもあるこの建物の見学からスタートです。

ブシャール家は1731年にワイン商を創業したファミリー。当時、ブドウ畑は教会の所有となっていましたが、フランス革命後に畑は売りに出され、この時期にコート ド ボーヌの有名な畑を中心に買い集め、約130ヘクタールに及ぶ自社畑を所有するブルゴーニュ最大級のドメーヌとなりました。現在では、価格の沸騰などでなかなか畑の購入は難しくなっていますが、近年ブシャールが取得した畑がいくつかあり、その中で重要なのがムルソー畑です。
1996年にムルソーの生産者、ロピュトー ミニョンがドメーヌを売り出した際に、元々ネゴス部門でブドウを購入していたり、またワインの販売を手伝っていたという友好的な関係から、彼らのムルソーの畑(約30ヘクタール)を入手することとなりました。その際、小さな区画ながらクロヴージョ、ボンヌマールの畑も一緒に購入することができたそうです。

コルトン畑
サヴィニー醸造施設
上:コルトン畑
下:サヴィニー醸造施設

アンリオグループ東アジア輸出担当者 西山雅己氏(以下西山氏)にお話を伺いました。

情野氏:いいタイミングで購入できましたね。

西山氏:そうですね、ここ最近ではまず無理でしょうね。

情野氏:その時には既にアンリオ家の傘下であったと思いますが、傘下に入ったことで何か変わったことはありますか?

西山氏:ムルソー以外でも、コートドニュイに少し畑を取得することができており、これはドメーヌとしては大きなことですね。畑の取得以外にも、変わったこと、変わらなかったこと、両方あります。変わらなかったこととしては、アンリオ家の傘下に入った後も、ブシャールで働いているスタッフは変わっていません。一方、ブシャール家からは最終的に当時若手で有能な現場のスタッフであった2名だけが残ることとなりました。その1人が、現在の支配人であるクリストフ ブシャール氏です。
 そして、アンリオ氏は現場でヒアリングして、ドメーヌに足りないものに投資するようにし、その究極なものは2005年に完成したサヴィニーの新しい醸造施設です。以前は赤ワインと白ワインを別の醸造所で醸造していましたが、2005年からは、ネゴスのワインも含め、すべてのワインを1箇所で醸造できるようになりました。これにより、品質が均一化され安定した生産が可能になり、ロット差も非常に少なくなりました。またフランス国内のみで販売されていたテーブルワインの生産もこれを機に止めました。醸造施設の床面積は当時の約3倍となり、発酵槽の数もほぼ3倍(赤用120個、白用120個)に増えたにも関わらず、ワインの全生産量は当時の半分となりました。

情野氏:品質重視のワイン造りへの転換ということですね。

西山氏:そうです。傘下となった95年には、専門家も含めてブラインドテイスティングを行い、状態のよくないワインはすべて廃棄しています。今瓶熟庫に残っているのはそのブラインドテイスティングで残ったワインということになります。その時に廃棄したワインの総額は、当時の金額で100万ユーロ分とも言われています。

クリストフ氏と情野氏
クリストフ氏と情野氏

アンリオ家の傘下に入る前から、創業ファミリー一員としてドメーヌで働いてきたクリストフ ブシャール氏にも聞いてみました。

クリストフ ブシャール氏(現支配人):アンリオ家の経営となりましたが、辞めた人はいませんし、チームも変わっていません。変わったのは使っている機材、発酵槽の数、醸造施設、プレスの機械などの設備面だけ。新しい醸造施設では以前よりも樽熟成がゆっくり進むようになり、また難しい年ほど良いワインが造れるようになりました。
現在使用している全ての発酵槽はすべて新しく購入したもの。約200に分けて管理されている区画をすべて別々に醸造することが可能となり、またグラビティー(重力)を利用した醸造ができるようになっただけでなく、細部にもこだわった施設です。その1つの例が発酵槽のネジヤマです。発酵槽で使われるネジのネジヤマは凹凸があるため、洗浄しにくいので、凹凸の殆どない特注のものを使用しています。こういった小さな部分からワインの汚染の原因となるもの一つ一つ排除していくことで、添加するSO2の量も減らすことが出来ています。近年ではSO2の添加量は以前に比べ約20%減っています。小さなこと、細かな作業の積み重ねが、ワインの品質の向上に繋がっているのです。

このブルゴーニュ最大級のドメーヌは、昔からのチーム力、そして新しい設備により、良質なワイン造りに励んでいます。

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