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アンバサダーが導く「アンリオトリロジー」の世界

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生産者との出会い アンリオ、フェーブル、ブシャールで状のソムリエが現地フランスで出会った生産者たちの想いを届けます。
Domaine William Fèvre 第3回「ウィリアム フェーブル、未来に向かって」

丁寧な畑仕事でワイン品質の85%が決まるというセギエ氏は、1998年から醸造責任者としてテロワールを忠実に表現すべく、シャブリでは非常に少ない手摘み収穫を行い、ビオロジック農法への転換を進めてきました。畑や醸造施設を案内していただきながら、セギエ氏と西山氏にお話を伺いました。

レクロ畑
レ クロ畑

最初にグラン クリュのレ クロ畑にやってきました。フェーブルは、ご存知のとおりシャブリ、グラン クリュの最大の所有面積を誇り、約15.2ヘクタールの畑を所有しています。そのすべての区画は斜面の最上部に位置しています。

情野氏:傾斜が随分あるので土が流れてしまいませんか?

セギエ氏:鋤入れをこまめにし、土の表面を柔らかくすることで土が流れてしまうことをある程度防げています。この区画は平均樹齢65年(1945年植樹)ほどです。フェーブルでは他の生産者と違い、ブドウの木を140cmくらいと高く仕立てています。高く仕立てることで縦に長く葉の面積を増やします。そして風通しのよいまま葉の光合成を促せるのです。収穫までにおそらくあと一回くらい畑に入り、風と通しを良くするために葉を落としていく作業をします。この2週間は天気に恵まれ風もよく吹いていたので、土が非常に乾燥した状態になっています。

グラン クリュ地図
グラン クリュ地図

セギエ氏:ここからは、レ クロのもう1つの区画(ヴァルミュールとの境目)です。少し下ったところにヴァルミュールの畑があります。このあたりのブドウの木も1948年に植えられた古い区画、先代ウィリアム フェーブルさんのお父さんの時代に植えた木です。ここも風通しを良くするために、葉を取り除く作業をしたばかりです。

情野氏:レ クロは日照条件がよいのですね。

セギエ氏:そうですね、安定しています。

情野氏:やっぱり、区画が広いと安定性は高くなりますか?

セギエ氏:この区画だけで約1.5ha、ブドウの木は68年、65年という樹齢ですが、それだけで品質的には随分と底上げされている部分があります。特に良いのは、区画の場所です。ヴァルミュールとの間の広いあぜ道によって隣の区画と非常に離れており、また上にも畑がありません。そしてこの区画は石が多い石灰質の強いエリアで、また標高も非常に高いところにあるため、フレッシュな酸とミネラルをワインにもたらしてくれます。

情野氏、セギエ氏
情野氏、セギエ氏

情野氏:セギエさんは1998年から既に様々なことに挑戦してきていると思いますが、これからやりたいこと、現時点で考えているようなことはありますか?

セギエ氏:今現在の醸造施設は、グラン クリュとプルミエ クリュを醸造する元々のドメーヌがあった場所と、そこから少し離れたところにあるACシャブリを醸造する新しい醸造施設の2つに分かれています。この2つの醸造施設で作業を行っていますが、これを将来的には1つに統合したいと思っています。新しい醸造施設は12年前に作ったもので、プティ シャブリと村名シャブリの醸造を行っています。

情野氏:となると新しい施設で全ての醸造を行いたいということですか?

セギエ氏:そういうことになりますね。2つの醸造施設は5分と離れていませんが、やはり一ヶ所で全てが管理できたほうが、物理的にも便利ですから。

アシスタントが2人いるため、畑の仕事の閑散期には、セギエ氏自身が海外にプロモーションへ行くことも増えてきたといいます。ワインを良く知っているマーケットで非常に情熱を感じる日本がセギエ氏はお気に入りだと言ってくれました。今後の活動が楽しみです。

プラスティックケース
醸造施設
上:プラスチックケース
下:醸造施設

続いて醸造施設を西山氏に案内していただきました。

西山氏:シャブリの大規模で新しい生産者は、もともと小麦栽培をやっていた人たちが多く、今もなおシャブリではブドウ収穫作業の95%が機械で行われていると言われています。
その中でフェーブルは昔からブドウ栽培を行っていた生産者なので、もともと手収穫を行っていました。しかし、セギエ氏が醸造責任者となったとき、収穫したブドウを小さなプラスチックケースに入れて運搬するという作業を取り入れました。シャブリでこのような方法を行っている生産者はいませんでしたので、非常に奇異な目で周りからは見られたようです。しかし、この収穫作業の様子を見たフランソワ・ラブノー氏は、「彼らは本気だ」と他の生産者に話したそうです。プラスチックケースを使う理由は、収穫したブドウがつぶれないということもありますが、収穫ブドウをバケツに入れ、それをトラックの荷台がいっぱいになるまで移すという作業をしていると、炎天下でブドウは温まり、また下のブドウはつぶれてしまいます。対してフェーブルでは、小さなヴァンのような車での輸送を繰り返すことによって、よい状態でセラーまで運んでくることができます。
しかも、このプラスチックケースで収穫しセラーにブドウを運んだ後、ケースは水で洗浄し泥を落とし、また畑に運んでいくという手間のかかる作業をしています。

情野氏、西山氏
情野氏、西山氏

西山氏:収穫したブドウを持ってきた後、選果台で選果します。この選果台を持っているのもシャブリの生産者ではフェーブルとあと一件(クリスチャン・モロー)だけです。「選果」とはシャブリでは、畑で行う選果のみです。フェーブルでは、そういう意味では2回選果をしているとも言えますね。

情野氏:機械収穫だと葉なども入ってしまいますよね?

西山氏:そうですね。色々なものが入ってしまいます。この選果台での作業のあとはプレスタンクにいれます。

情野氏:プレスを行う前にブドウが温まってしまっている場合には、ジュースも温かくなっているので低温の発酵はできませんよね?

西山氏:そうですね、ですのでプレスの後に冷やします。デブルバージュの後で冷却し、その後発酵させます。発酵槽がすべて小型の発酵槽ですので、古いタンクですが区画ごとの醸造ができることが利点です。例えば、同じレクロの区画の中でも古木と若木の区画を別々に醸造できるのです。

情野氏:そもそも小さいプラスチックのケースで収穫していることが前提ですね。

西山氏:そのとおりです。

丁寧な畑仕事から、瓶詰めまで手間を惜しまずに努力し続けるウィリアム フェーブル。2013年にはグラン クリュ全区画にビオディナミを採用し、彼らの取り組みは今後も目が放せません。

第1回「先代ウィリアムフェーブル氏の時代〜アンリオ家の買収、そしてドメーヌの今」へ

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