マイペースにも程がある。いや、変わり者にも程がある、と言うべきだろうか? ジャンとゴーティエのテヴネ父子はそろって柔和な顔つきでいかにもマイペースな風貌だが、決して変わり者らしき匂いはしない。
マコネーなのに3年熟成させてから出荷させる。マコネーなのに貴腐ブドウでワインを造る。(しつこいが)マコネーなのにハーフボトルに入った94年ヴィンテージの貴腐ワインを15年経って初めてリリースする。さらには「ウチではマロラクティック発酵が終わってから再びアルコール発酵が始まる」「……」
どう考えても常識外れのワイン造りをしている父子から変わり者の鋭いオーラが出ていないのは、彼らにとってはこれが当たり前のことだからだ。
「人為的なことをせずに果汁をそのままにしていたら寒すぎてアルコール発酵が終わらず、春が来たら先にマロが始まってしまうだけ。今はワインを『制御』することが当たり前になっているけど、昔の人にとってはこっちが当たり前だったんだ」。ゴーティエはまだ若いのにすっかり先祖代々の教えを継承している。そういえばあのニコラ・ジョリーも「醸造学校に行っても碌なことを覚えない」と言っていたな……。
こんな人たちだから周囲は変人扱い。ヴィレ クレッセのAOCを使わせないためにアルコール度数の規定を変えて(ボングランはこの地方としては度数がやや高め)、マコン ヴィラージュに格下げさせられたというエピソードもある。
世間では商業的思惑でビオを声高に謳う生産者も多い。だがテヴネ父子には有機栽培は当たり前のこと。商売人の私の気も知らず、一言も語ろうとしない。
ジャン・テヴネ氏と握手するとその手の柔らかさと握力の弱さに驚く。貴腐化をもたらす泥灰質土壌のようにふかふかだ。凄いワインを造っているのに力みがない。伝えようという欲もない。手は人やワインを表すというが彼は好例だ。
「ゆっくり飲めば説明しなくてもわかるよ」彼の手がそう諭している気がしてならない。
マコネーのヴィレ村とクレッセ村の間にあるカンテーヌ村に位置します。現在は当主のジャン・テヴネ氏と息子のゴーティエ氏が二人三脚で運営しています。ドメーヌ名の"Bongran"は"Bongrain(良いブドウの粒から造られるワイン)"に由来しています。代々継承されてきた伝統的な手法で栽培・醸造に取り組み、飲み頃になったものだけを出荷しています。
認証を取得していなかったものの、長年除草剤や化学肥料を一切使用しないビオロジック農法を実践。2007年に申請し、2009年にECOCERT(エコセール)の認証を取得しました。除草剤を使わない代わりに何度も鋤入れを行っている畑の土は、足が沈むほどの柔らかさ。ブドウの収穫は、完熟しているかを確認しながら複数回に分けて手摘みで行っています。
セラー横にある畑は粘土石灰土壌で、この畑のブドウからキュベ トラディションが造られています。その植えの斜面は泥灰質土壌で、ソーヌ河で発生する霧の湿度を吸収し保つ性質があるため、ボトリティス菌の発生をもたらします。そのため、キュベ EJ テヴネ、キュベ ルヴルテ、キュベ ボトリティスがこの畑のブドウから造られます。
出来るだけ長い時間をかけて発酵することが好ましいと考え、アルコール発酵は10〜18度の低温でゆっくり行っています。滓との接触面が広くなるよう細長いステンレスタンクか古い大樽を使い醸造。長い発酵期間中に発酵が止まってしまった場合でも、人口酵母を使わず別のタンクに移し変えるなどして、天然酵母の活動を促します。その後、マロラクティック発酵を3〜4ヶ月、そしてステンレスタンクで熟成させます。補糖、補酸は一切行っていません。
- ドメーヌ ド ラ ボングラン
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