「ひょっとしてまた痩せた?」
ヴァンサンに会うといつもそう思う。ドメーヌ ソメーズ・ミシュランのヴァンサン・ソメーズ氏の印象は「苦行僧」だ。コート・ドールで高名なヴィニュロンのお上品ないでたちや高級車を見た後だから余計にそう思うのかも知れない。早朝からビオディナミのプレパラシオンを撒き、一日中厳しい斜面で自ら土とブドウの手入れを行う彼を見ると、自らに苦行を課してブルゴーニュを開墾したシトー派の修道士はきっとこんなだったのだろうと想像してしまう。セラーで試飲する時も、訪問した我々に全力で説明する(ひたすら長い)。一緒に食事をしても「ウドンコ病に効くプレパラシオンは……」と栽培の話から離れない。喋ってばかりで箸(というかフォークとナイフ)が全く進まないから奥さんのクリスティーヌに怒られる。修道士はこんなにおしゃべりではないだろうが、その内容のストイックさは充分に清貧の世界だ。僧侶と一緒では食欲も湧かないというものだが、一方のクリスティーヌは明るくチャーミングで、うまいことバランスが取れているものだと感心する。
そんな二人には娘さんがいて畑を手伝い、将来はドメーヌを継ぐことになっていた。でも残念なことに交通事故で半身不随になり、遠路の施設に入院しているそうだ。
こうして書いていると神様が試練ばかりを与えているようで辛くなってくるが、ぜひ彼のワインを飲んでみていただきたい。開けたら何時間もかけて、あるいは何日かかけて。きっと奥から様々な味わいが出てくるだろう。それは彼自身が手がけた土地の味と、彼の誠実さや人間としての深みが染み出ているのだと思う。
それを感じてもらえたらこんなに嬉しいことはない。
1978年に現当主のロジェ・ソメーズ氏が設立しました。1982年にクリスティーヌ・ミシュランと結婚し、ドメーヌ名を「ドメーヌ ソメーズ ミシュラン」としました。マコネー地区ヴェルジソン村の"ロッシュ ド ヴェルジソン"丘の中腹に位置します。夫婦と従業1名と小さなドメーヌで、ブドウの持つポテンシャルを上げるため、畑作業を重視したワイン造りを行っています。
2005年からプーイィ フュイッセ クロ シュール ラ ロシュでビオディナミを導入し、2006年にはプーイィ フュイッセ レ ロンシュヴァとサン ヴェラン、2007年から全区画で実施しています。プーイィ フュイッセ、サン ヴェラン、マコン ヴィラージュ、マコンの4つのアペラシオンに26区画、約9haの畑を所有しています。土が踏み固められないようにトラクターを使用しない、ブドウがよく熟すように芽かきや葉の摘み取り作業を行う、収穫はすべて手摘みで行うなど、できるだけ手作業し、土の中の力を強くするようにしています。
ほぼすべてのキュヴェを228リットルの大樽で醸造しています。発酵期間はキュヴェにより異なり、3週間から数ヶ月に渡り、発酵温度が25℃以上にならないようにしています。バトナージュは約8〜10日毎、3〜4ヶ月に渡って行い、瓶詰め前に軽くフィルターをかけます。
- ドメーヌ ソメーズ ミシュラン
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