2006年9月9日土曜日、フランスはボルドーメドック地区で開催される「メドック・マラソン」にファインズも松本・ヴァンサンの2名の選手登録をして参加してきました。2名の選手はフルマラソン初参加で、しかも砂利道の多いメドックマラソン特有のコースと残暑厳しく日中は30度を越えるという悪条件中、ふたりとも見事に完走しました。
前日までアルザスのドメーヌヴァインバックを見学してからボルドー入りをしたので、ゼッケンを受け取り登録確認を済ませたのは夕方4時近くでした。スタート地点となるポーイヤックの街はすでにお祭りムード満開。世界各地から7000名を超えるランナーとその家族や観客が集まるとても大きなイベントなので、会場を飛び交う言葉もフランス語・ドイツ語・イタリア語・スペイン語など(このくらいまでしか聞き分けられません)国際色豊かでした。
本番に備え個人で走り込みをしていた二人も実際にゼッケンを受け取ると、にわかに緊張の表情になります。団長代行兼広報担当として同行した私も、そのお祭りのような独特の空気に胸が躍る感じを覚えました(走るわけではないので、かなり無責任な意見ですが・・・)。
9月9日朝5時半過ぎ、まだ辺りは真っ暗な中宿泊していたシャトーを出発、前日下見を兼ねて会場付近を散策した際に現地のコーディネーターの方から「朝7時前には駐車スペースを確保しないとスタート地点周辺は大渋滞になる。」というアドバイスを頂いたことを忠実に守りました。
目的の駐車場までの道のりは車で約40分、所謂「ワイン街道」と呼ばれる名立たるシャトーを左右に見ながらメドックを北上するルートとは別の裏道を選び、月明かりの下の幻想的な葡萄畑の中を走りました。
6時半過ぎには無事到着してまずは前日街のスーパーで買っておいた、リンゴやプラムなどの果実やクロワッサンなどで腹ごしらえをして、最後の仕上げに某薬品メーカーの強壮剤を飲み、ストレッチを始めました。
メドックマラソンの人気の秘密は銘醸シャトーを駆け抜け、シャトーで振舞われるワインを飲みながら走るという世界的なワイン産地ボルドーならではのスタイルと、もうひとつ走者の九割以上が各々趣向を凝らした仮装姿で参加することにあります。2名の選手の仮装のテーマは「SAMURAI」。
ずばり紋付袴にちょんまげ、腰には刀といういでたちでした(この格好で42kmを走らせるようというのだから・・・非情です)。しかも1名の選手は在日20年の正真正銘のフランス人、欧米人のSAMURAI姿はとてもユニークで、もう1人は赤色のSAMURAI。赤と黒のふたりのSAMURAIは、色んな仮装をしている選手や観客からも声を掛けられたり、写真を取られたりとスタート前からテンションが上がってきました。
スタートは9時半。7000人のランナーが一斉にスタートする混雑を避ける為なのか?スタート地点には十数人の絶世の美女たちが、勝利の女神のようにランナーの見送りをするというフランスらしい催しがあったようです。というのも裏方部隊の私は、2名の選手からSAMURAI仮装のままで42kmを走りきるのは困難なので途中で衣装を脱ぎたいとの申し出があり、話し合いの結果15km地点のシャトーラグランジュで衣装を受取る為、スタートの1時間も前に最短距離8kmの道のりを歩き出していたから、このイベントの一番華やかな場面に遭遇することはありませんでした。
15km地点のシャトーラグランジュでは飲み物や食べ物の補給はもちろん、救護班が待機をしていてランナーのサポートも万全でした。庭園にはたくさんの観客が応援の声をあげ、またバンド演奏などがお祭りムードを一層高めていました。
当初の予定通り約2時間弱でラグランジュに到着、SAMURAIの衣装は大量の汗の為絞れるくらい重く、足にもまとわりつく袴だったので選手からは非常に不評でした。衣装を脱ぎランニングシャツのユニフォームに着替え水と果物を補給して、残りの25kmの道のりに飛び出していきました。
裏方部隊も再度8kmの道のりを歩き、ホームベースとなる車のところへ戻りました。16時過ぎゴール地点には次々とランナーが戻ってきています。ふたりが無事戻ってこられるのか、どこかの救護テントでリタイアしたのか?待つ身としてはあてもなくただベンチで完走して笑顔で歩いているランナーの流れを見ていました。するとゴール地点で完走したランナーの名前を読上げる場内のアナウンサーの声で「ヒサシ・マツモト! ジャポネ」という聞き覚えのある名前が読上げられました。嬉しくて人の波に逆らって松本さんの姿を探して見つけたときは、とても感動したのことを今でもよく覚えています。結果はふたりとも見事に完走。
記録はヴァンサンが6時間23分、完走者の7108人中6364位。松本は6時間51分、完走者の7108人中6967位。初のフルマラソンにしては見事な成績でしたし、もちろん大事なのは記録よりもこの競技を心から楽しめたことだと思います。
松本の感想
今回のメドックマラソンは自分なりにかなりトレーニングを積んでいったつもりでしたが、全然甘かったです。メドックの起伏の激しさと砂利の多さを肌で感じさせられました。でも無事完走できて満足です。収穫前の畑の中を走る醍醐味は格別でした。少しはボルドーのシャトーにファインズをアピールできたと思います。
ヴァンサンの感想
今年6月にメドックマラソン参加者の社内公募案内があり、参加することを決めました。とはいえ・・・、普段スポーツはやっているもののフルマラソンは想像もつかない世界。練習は7月から始め除々に距離を延ばして、8月中旬の日曜日に皇居3周に挑戦し1時間40分で完走しましたが、フルマラソンはその3倍。完走できる自信はありませんでした。完走できたことももちろん大事ですが、記録よりもこの大きな祭りに参加して楽しめたことが一番の勲章だと思います。