収穫された黒ブドウはまず除梗破砕され、ブドウの実を果皮や種子ごと発酵槽に入れる。酵母の働きによりブドウに含まれている糖分がアルコールへと変わる過程がアルコール発酵で、発酵槽には伝統的な木製の開放桶の他、樹脂でコーティングされた鋼鉄製もある。また近年、衛生面に優れたステンレスタンクが好まれるようになってきている。赤ワインを濃く色づかせるためには、ブドウの果皮から色素を十分に抽出しなければならない。発酵がすすむにつれ、果皮や種子などの固形物は二酸化炭素に押し上げられ、発酵槽の上面に浮き上がってくるので、発酵槽の下方から果汁の攪拌を行う。アルコール発酵終了後、乳酸菌によってリンゴ酸を乳酸に変える乳酸発酵(マロラクティック発酵)が行われる。
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その後、若いワインと果皮や種などの固形部分とを分離する。固形部分の中にもワインが残っているので、圧搾機にかけ搾り取る。この工程は、ワインに雑味をもたらす場合もあるが、酒質の強化のためにあえて行う生産者もいる。
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その後、とくに高級な赤ワインは樽の中で寝かされ、その期間は6ヶ月から3年とはばが広い。瓶詰め前にワインの濁りを除くため、卵白などを用いてワインの清澄化を行い、さらに濾過器にかけて微生物や不純物を完全に取り除く。しかし、濾過し過ぎればワインの味わいの上で重要な成分まで取り除きかねないので、最近では無濾過のワインも少なくない。こうして仕上がったワインは瓶に詰められる。
白ワインは白ブドウでなくとも、黒ブドウから造ることもできる。赤い色素は黒ブドウの果皮にあるので、果皮と果汁との接触を避ければ、無色の果汁が得られるからである。赤ワインが発酵後に圧搾を行うのに対し、白ワインは除梗破砕後、ただちに圧搾機で搾汁する。
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こうして得た果汁をアルコール発酵させるが、発酵槽はさまざまで、ブドウ本来の香りを生かし、新鮮でさっぱりとしたスタイルに仕上げるためにはステンレスタンクを、ヴァニラのフレーヴァーやタンニンをワインに与え、しったりとしたタイプにするためにはオークの小樽を用いる。また、温度管理の容易なステンレスタンクで発酵を行った後、オークの小樽で熟成を施すこともある。
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赤ワイン同様、白ワインも乳酸発酵をさせて酸味を和らげる場合があるが、もともと酸味の少ない温暖な地方のワインでは、乳酸発酵を行わないこともある。そして、ワインに含まれている酒石酸は低温状態では結晶化するため、濾過してから瓶詰めする。
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シャンパーニュを造るには、瓶内2次発酵法(別名シャンパーニュ方式)と呼ばれる方法がとられる。まず非発泡性ワインを造るが、その工程は通常の白ワインと変わらず、黒ブドウの場合も搾汁後、ただちに果皮との接触を避けて白ワインにする。
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ワインに気泡を発生させるため、瓶に詰めるときワインに糖と酵母を溶かしたもの(リキュール・ド・ティラージュ)を加えて密栓する。するとワインは、瓶の中でもう一度発酵を始め、炭酸ガスを発生させる。瓶内で発酵が行われると、瓶の中に澱が溜まってくる。
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最終的にこの澱を取り除くため、ピュピトルと呼ばれる台に瓶の首を挿し、これを水平状態から回転させながら徐々に起こし、最終的には倒立状態にする。この工程をルミュアージュ(動瓶)と呼ぶ。
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そして瓶口に集まった澱は、この部分を氷点下の塩水に浸し冷却し、瓶の栓を開けると炭酸ガスの圧力で塊が飛び出す。これをデゴルジュマン(口抜き)と言い、この時、甘味調整をしたワイン(リキュール・デクスペディシオン)を加えてコルク栓を打ち、針金で留める。シャンパーニュの呼称を名乗るためには、決められた畑のブドウを用い、ノン・ヴィンテージではリキュール・ド・ティラージュを加えた後、最低1年の瓶内熟成。ヴィンテージ・シャンパーニュでは、収穫後最低3年の時を経る義務が課せられている。