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アンバサダーが導く「アンリオトリロジー」の世界

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生産者との出会い アンリオ、フェーブル、ブシャールで状のソムリエが現地フランスで出会った生産者たちの想いを届けます。
Domaine William Fèvre 「2012年ヴィンテージ、フェーブルの醸造責任者として」

レクロ畑
レ クロ畑

現地でリリースされたばかりの2012年ヴィンテージについて、セギエ氏にお話を聞くことが出来ました。「開花はグラン クリュのヴォデジール畑で6月1日に始まり、最も遅い区画の開花が終わったのが6月24〜25日で、この長い開花の期間を考えても、どれだけ不安定な天候の開花時期であったかがお分かりいただけるでしょう。2012年は、4月初めに遅霜の被害にあう場所も出てくるほど気温が下がり、6〜7月は雨が多く比較的寒かったのですが、8月はとても暑く、その暑さは9月まで続き、ブドウは大変良く熟しました。収穫はシャブリとしては比較的早い9月20日から開始。最終的にグラン クリュ畑では、非常に低い収量となりましたが、豊かさと凝縮感がありながら、しっかりとしたフレッシュさも残したワインに仕上がりました。プティ シャブリやACシャブリの地域は遅霜の被害にあっておらず、このクラスのワインはグラン クリュのような低収量ということはありません。」

ディディエ セギエ氏
ディディエ セギエ氏
上:ディディエ セギエ氏
下:試飲アイテム

早速、2012年ACシャブリの買いブドウもの(メゾン)と自社畑のブドウもの(ドメーヌ)の試飲をしながら話を聞きました。

情野氏:買いブドウで造っているとは思えないようなクオリティですね。

セギエ氏:エレガントな果実味があり、ミネラルもしっかりと出ているワインに仕上がりました。買いブドウのワインながら、長期契約の信頼できる生産者から購入し醸造しています。実際に畑を見に行ったり、サンプルの採取を行ったりと、こまめに足を運びドメーヌのワインと近付けるために確実な管理を行うようにしています。2012年は100%ステンレスタンクで造り、樽は全く使用していません。その理由は酸が十分にありながら果実味も十分であったため、樽熟成で和らげる必要がなかったからです。

情野氏:柑橘系の果実というより白桃のようなストーンフルーツを思わせる香りがありますね。

セギエ氏:ヴィンテージの特徴でしょうね、桃やパイナップルを思わせる印象もあります。

情野氏:ドメーヌシャブリと比べるのが楽しみですね。

セギエ氏:ドメーヌ畑のACシャブリは、6月に瓶詰したものです。こちらは、ヴィエイユ ヴィーニュ(古樹)で、ビオロジックの採用された畑、そして昔からのシャブリの区画、すなわちプルミエ クリュ畑の周辺に位置する畑から収穫されたブドウで造られています。新樽以外の樽5〜10%を使用しています。先代のフェーブル氏は新樽を多用しましたが、私が醸造するようになってからは、新樽は使用していません。

情野氏:以前、利用したことがあるフェーブル氏のワインは、樽が効いていた印象が強くあります。

セギエ氏:そうですね、シャブリに樽をつけすぎると、酸化傾向が出てしまい、ワインが疲れたような印象になります。私たちは、醸造段階での人間の作業が見えないようなワインを造ること、すなわちピュアでフレッシュ感とミネラルの美しいシャブリを造りたいと思っています。

情野氏:シャブリのテロワールをそのままに表現するということですね。

セギエ氏:そのとおりです。メゾンとドメーヌのシャブリの違いは感じて頂けましたか?

情野氏:現段階ではメゾンは果実味が勝っている印象、ドメーヌはミネラルがよりくっきりしている印象ですね。

セギエ氏:ビオロジックに転換してから、シャブリのミネラルがよりくっきり表現されている印象があります。

テイスティングルームにて
テイスティングルームにて

試飲を進めていくうちに情野氏が醸造責任者としてのセギエ氏の素顔に迫りました。

セギエ氏:実際にシャブリのワイン造りをして始めて、シャブリでもテロワールに多くの違いがあることを知りました。

情野氏:ウィリアム フェーブルの醸造責任者である現在は、白ワインしか造りませんが、赤ワインを造りたいと思ったことはありますか?

セギエ氏:ブシャールの醸造チームにいたときには、赤も白も造っていましたから、最初にフェーブルで醸造を始めた時には、そう思いました。しかしテロワールの違いに気づいてからは、全く赤ワインの醸造に興味がなくなりました。

情野氏:赤と白両方のワインを造るというのは難しいことのように思えますが。

セギエ氏:そうですね、難しいかもしれません。例えば、私が白ワインを醸造する時に重要視しているのは、収穫からの最初の48時間です。これは収穫してからプレスをするまでの時間となります。

情野氏:プレスも非常にゆっくりと時間をかけて行うのではありませんか?

セギエ氏:そうですね、それとジュースのセレクションも大事です。通常私たちは、ジュースを3つに分けます。果皮についている汚れを含んでいる可能性がある最初の約5%程度のフリーランのジュースを取り除き、その後に出てくる約90%を通常ワインに使用します。そして最後の約5%のジュースも抽出によるタンニン分等がワインに含まれてしまうのを防ぐために除きます。その後この3つのジュースをそれぞれ別々に醸造していきます。最終的にテイスティングして、最初と最後のジュースの各5%をワインにアッサンブラージュするか、格下げをするかを決めます。格下げをする場合には、シャブリ プルミエ クリュ、グラン クリュなどのキュヴェは造っていませんので、先ほど試飲して頂いたドメーヌのACシャブリに格下げすることになります。逆にメゾンのヴァイヨンなどは、メゾンのACシャブリに格下げをしています。

情野氏:ドメーヌシャブリには、グラン クリュのジュースが入っている可能性があると考えると、お得感がありますね。味わいにも納得がいきます。

セギエ氏:そうですね。

コート ド ブーグロ畑にてセギエ氏、情野氏
コート ド ブーグロ畑にて
セギエ氏、情野氏

情野氏:セギエさんが一番好きなプルミエ クリュとグラン クリュのシャブリを1つ教えてください。

セギエ氏:難しい質問ですね。プルミエ クリュなら、モンテ ド トネールとヴォロランでしょうか。同じプルミエ クリュでも全く違う個性を持っている2つです。モンテ ド トネールはミネラルのワイン、ヴォロランはグラン クリュ畑に最も近いプルミエ クリュ畑で、豊かさと複雑さを持っているワインです。

情野氏:グラン クリュではどうですか?

セギエ氏:更に難しい質問ですね。グラン クリュはプルミエ クリュ以上に、それぞれの畑に個性があります。ですが敢えて言うなら、コート ド ブーグロだと思います。私はここで敢えてレ クロとは言いません。なぜなら、レ クロの畑が偉大な畑であることは既に多くの方がご存知ですから、私が言う必要はありません。あとはヴァルミュールでしょうか。コート ド ブーグロは石ころだらけの南向きの急斜面の畑です。同じ南向きでもヴォデジールに比べるとより男性的なワインですね。太陽の影響をテロワール由来の酸が断ち切ってバランスを保っているようなワインです。ヴァルミュールの畑はグラン クリュの一番上のほうにあり、マルヌ土壌もたまっていますがキンメリジャンも当然あります。標高も高いため酸もしっかりあり、よい緊張感があり、引き締まってまっすぐなワインです。

ビオロジックに転換してから、それぞれの畑の個性がより明確にワインに現れるようになったと話すセギエ氏。究極のシャブリのテロワールの味わいの追求に余念はありません。

第3回「ウィリアム フェーブル、未来に向かって」へ

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