ブルゴーニュの畑を歩いていると“テロワール”という言葉の意味を体感することができます。陽の当たり方、風の吹き方、土壌の様子を目で見て、畑を歩いて足で感じ、地図だけではわからないその土地の個性を全身で感じました。印象的だった畑のいくつかをご紹介したいと思います。
まずはムルソーです。ヴィラージュのムルソー レ クル、プルミエ クリュのジュヌヴリエールとペリエール畑を見学してきました。
ムルソー レ クルは丘の最上部に位置し、畑からムルソーの村が一望できます。土壌は写真でも良くわかるように、一面石ころがびっしりと覆っています。日差しをたくさん浴びますが気温は低いため、ブドウがゆっくり熟していきます。醸造責任者のフィリップ・プロ氏によると、土壌としてはプルミエ クリュに匹敵するようなレベルですが、標高が高い分酸が高めとなります。この標高の高さによる利点もあります。以前ブルゴーニュのシャルドネは皮と種が熟すのを待つと実もちょうど良い状態であったのが、温暖化の影響で皮や種が熟す頃には実が熟しすぎてしまうことがあるそうです。それがこのレ クルではあまり温暖化の影響を受けていないそうです。
ムルソー ジュヌヴリエールは緩やかなスロープのような斜面にあり、上からの侵食で比較的土があり、ペリエールに比べ石灰の量が少なくやや粘土の多い土壌です。写真を見て頂くと、表面が褐色であることがわかります。斜面のため、土が雨などで流れてしまわないように芝を植えています。プロ氏によると、ムルソーの典型的な味わいのワインができるのがこのジュヌヴリエールです。テクスチャーがあり、リッチで滑らかな口当たりのワインが生まれます。
ムルソー ペリエールはピュリニー モンラッシェとの境に位置し、昔石切場だった場所です。テラス状の段々畑になっていて、土壌はジュヌヴリエールに比べ白っぽく石灰の石が目立ち、土が少ない畑です。ブシャールでは2つの区画を所有していますが、収穫時期が異なるため別々に醸造し、最終的にブレンドしています。美しい酸味とミネラル感を持つワインとなり、プロ氏は「シュヴァリエ モンラッシェの弟分のようなワイン」と表現しています。
次はヴォルネー カイユレ畑です。ヴォルネー カイユレはブシャールが1775年に初めて購入した伝統のある畑です。南向きの日当たりの良い場所で、土壌は粘土質が多く表面には石灰の小石があります。熱を吸収しやすい土壌のため、ブドウが早く熟します。そのため、ブシャールのピノ ノワールの畑の中でここから収穫することも多いそうです。訪問したのは6月中旬で開花の季節でしたが、この畑は既に開花が終わり小さな実ができていました。2010年を試飲すると、コンフィチュールのような果実感があり、酸がワインに溶け込んでいます。洗練の中にエネルギーさもあり、暖かいテロワールのワインということを感じさせてくれます。
ブシャールを代表する畑、ボーヌ グレーヴ ヴィーニュ ド ランファン ジェズュ! プルミエ クリュですが、ブシャールにとって顔となる畑でグラン クリュに匹敵するワインを生み出す畑として、ブシャールのスタッフもここを所有することに誇りを持っています。グレーヴ畑の中央に位置する区画で、周りのグレーヴ畑より一段高くなっていて日照条件が良い場所です。土壌は石灰の小石が多く砂地のようで水はけが良いため土の中の水分が少なく、ブドウの樹は根を深く張ろうとするためこの区画では8m位の深さまで根が張っています。2005年のようにとても天候が良く雨が少なかった年は、根が深いため樹が枯れてしまうということがなく、2010年のように雨が多い年でも土壌の水はけが良いため凝縮感があるというように、どのような天候でも良いブドウを育てることができ、どのヴィンテージもエレガントなワインとなります。
最後に見学したのは、コルトンの丘最上部にあるル コルトン畑です。アロース コルトン側にあるため、ピノ ノワールとシャルドネ両方を栽培しています。下の方の土壌は褐色でピノ ノワール向き、上の方は白っぽくなっていてシャルドネ向きです。一番上まで登ってみたのですが、非常に傾斜の強い斜面になっていて登るのも一苦労。畑を良く見ると、斜面に対し水平にブドウの樹が植えられています。これは傾斜がきついため、土が流れてしまわないようするためです。またこの傾斜はトラクターが使えないため、この畑は馬で耕しているそうです。
畑を見て感じたテロワール。ブシャールではこのテロワールを生かしたワイン造りを行っています。次はそのワイン造りについてレポートします。