Perrot-Minot
概要
現当主クリストフ ペロ・ミノが
引き継いで以来、
気鋭の生産者として評価を高め、
現代ブルゴーニュのトップランナーに
位置付けられるドメーヌ。
ドメーヌの起源は19世紀半ばに遡る。20世紀初頭にアメデ メルムがドメーヌの基礎を固め、その後アルマン メルムが引き継いだ。1973年にドメーヌ アルマン メルムが2つに分かれ、アルマンの娘、マリー・フランスと夫のアンリ ペロ・ミノがモレ・サン・ドニに本拠を構えドメーヌ ペロ・ミノを設立する。
アンリの息子で現当主のクリストフは1980年代にパリに出てファッションデザインを学んだ後、クルティエの仕事を経て実家であるこのドメーヌを引き継ぐことになったのが1993年である。そして現在はベタンヌ+ドゥソーヴ5 つ星、ル ギード デ メイユール ヴァン ド フランス3 つ星という高い評価を獲得するまでに至っている。
畑と造り
有名畑の中でも更に良い区画を所有。
平均樹齢は高く、
小粒のミルランダージュを重視。
比類なき選果へのこだわりから
完璧なブドウのみを使用。
ドメーヌ ペロ・ミノは、モレ・サン・ドニ、ジュヴレ・シャンベルタン、シャンボール・ミュジニー、ヴォーヌ・ロマネ、ニュイ・サン・ジョルジュに畑を所有。グランクリュ、プルミエクリュをはじめとし所有畑の合計は約15haに及ぶ。それぞれの畑は斜面の中腹という恵まれた場所に広がっており、ブドウ樹の平均樹齢が高いのが特徴である。
クリストフに案内してもらったのは、シャンボール・ミュジニー村最南端のコンブ ドルヴォー。ジーンズにポロシャツというスタイルで、胸を張り視線をやや上にして畑の中を歩く彼は、ドメーヌのオーナーというよりはむしろ映画監督かアーティストのように映る。
彼は有機の肥料を極力使用。気候(気温、湿度、風向き)を観察しながら、畑の健康状態に気を配って予防に努めることにより、農薬の使用量を最小限に抑え、土壌の微生物の活動を促すという循環構造を推し進めている。
比類無き素材へのこだわり
仕立ては主にブルゴーニュで主流のギヨ サンプルだ。房の数を制限しブドウの熟度を高める。その年々により摘葉やグリーンハーヴェストでさらに収量を抑えることもあるが、全体で平均25~30hl/haという驚くべき低収量が目標である。
また、ペロ・ミノの凄みを象徴するのが選果である。収穫は手摘み。畑で1度目の選果を行う。次ぎに小さな籠で運ばれたブドウは選果台にて2度目の選果を実施する。2台の選果台は縦に並べられ、20名ほどの人々が一斉にブドウと対峙。クリストフ本人も参加する。選果は非常に厳格だ。すべての房を2つに切り、中心の隠れた腐敗や未熟な果粒の有無を厳格に確認して排除する。こうして健全なブドウのみが残される。健全さだけでなく、使用するブドウは果粒の大きさまで注意が払われ、テロワールを最も表現する樹齢の高い樹から収穫される極小ブドウ(=ミルランダージュなど)のみが残される。その結果、極めてクリーンでキメ細かくエレガントでありながら、なめらかで果実の充実感の溢れるワインが生みだされるのだ。
高樹齢のブドウから生まれる凝縮感の高いブドウと鬼気迫る程の選果へのこだわり。これこそがドメーヌ ペロ・ミノのワインを現在の高みにまで押し上げた秘密である。「いらないものを除くのではない。必要なものだけを選ぶ」のである。彼がここまで素材にこだわるのには、かのアンリ・ジャイエからの教えが大きく影響しているという。詳しくはインタビュー動画をご視聴いただきたい。
ワインの状態やヴィンテージに応じて醸造は丁寧に厳正に
想像してほしい。手元にあるブドウは入念にセレクトされた宝石とも呼べる質のものだけだ。ゆえに醸造面で過度な介入の必要は無くなる。
醸造工程では、発酵前には果実の風味を引き出すため低温(14°C)でマセラシオンを5〜7日間実施。テロワール本来の特徴をより引き出すために、発酵は天然酵母のみを使用。ワインの状態やヴィンテージに応じてピジャージュやルモンタージュの頻度や強さを調整する。
圧搾は種から硬く乾いたタンニンが 出ないよう極めてソフトに行い、醸造終了後はデブルバージュのため2〜3日間ワインを落ち着かせ樽に移動。年により一部のブドウを全房(除梗しない)で発酵させる事もある。
自然発生するガスや澱をワインの中に残すことで新鮮なアロマを保持するため、澱引き( スーティラージュ) は瓶詰め1 ヶ月前の一度のみにとどめている。
瓶詰めはアロマを最大限閉じ込めるためビオディナミ カレンダーの「花の日」または「果実の日」 のみに行い、ワインにストレスを与えないよう重力によって行われる(900本/1時間)。
またペロ・ミノのワインは長期熟成向きであることと消費者をコルク臭の被害から守るため、1,000個あたり35個のコルクの分析を専門のラボに依頼し徹底した品質チェックを行っていることも付記しておく。
93年のクリストフ着任以降のペロ・ミノには時代を追って3つのスタイルが存在するという。簡単にまとめると下記のようになる。
・90年代の「凝縮感」を追い求めたスタイル。
・2000年代前半の自然に身体に染み込むようなエレガントかつシルキーでバランスのとれたスタイル。
・2000年代後半からは新しくなった醸造設備をもとにさらにシルキーかつエレガントで、より純粋さ感じられるスタイル。ちなみにこの3つ目の時代に新樽比率は大きく減少している。
これについては彼がインタビューの中で明確に語っているので詳しくはページ下部の動画を是非ご覧いただきたい。
なお、この3つのスタイルは優劣を示すものではなく、過去のスタイルのワインも素晴らしい熟成を見せていると言う。
ワイン
エレガントで身体に染み込むフィネスと
透明感を併せ持ちながら
エネルギーにあふれ
解像度の高さを感じさせるワイン。
ニュイ・サン・ジョルジュ プルミエクリュ
ラ リシュモーヌ キュヴェ ユルトラ ⅤⅤ
キュヴェ ユルトラは、ラ リシュモーヌの南に位置し1902年に植えられた区画のブドウを使用。100年を超える樹齢に加えて、粘土と石灰質の土壌には多くの小石が含まれるため水はけが良く、根が地中深くまで伸びているため、丸みやフレッシュさ、スパイスの香りが際立つ。きめ細かいシルキーなタンニンもこのテロワールの特徴である。
シャンボール・ミュジニー プルミエクリュ
ラ コンブ ドルヴォー キュヴェ ユルトラ ⅤⅤ
コンブ ドルヴォーはシャンボール村の最南端、グランクリュ ミュジニーとエシェゾーに挟まれた好立地。キュヴェ ユルトラはミュジニーに隣接する斜面下部に広がる畑の中で樹齢が最も高い区画のブドウを使用。このテロワールは泥土をより多く含んだ細かい土により、凝縮感が高く深みがありフレッシュさも供えたワインとなる。
フィロソフィー
よく観察し 細部にこだわり
調整を続けること
こうすることで エレガントで
輝きやエネルギーを感じるワイン、
つまり 魂のあるワインが生まれるのです。
円錐形の塔屋が象徴的な美しい建物を地下に降りると、そこは新設されたセラーである。PMのロゴマークを織り込まれた美しい鉄格子の扉の先にはドーム形状の美しい空間が広がっており、木箱に入ったドメーヌ ペロ・ミノの各キュベが積み上げられている。奥行きのあるそのスペースの一番奥で椅子に腰掛けた銀髪のクリストフ。カメラを前に語る彼の言葉はどこまでも明晰かつ深みに満ちており、ペロ・ミノが生み出すワインのクオリティともどこか通じるところがある。必見のインタビューだろう。
エクスペリエンス
理想は
「いつでも好きなときに楽しめるワイン。
ずっと飲み続けることができるワイン。」
2001年ヴォーヌ・ロマネに移住した際、家の向かいにアンリ ジャイエが住んでいたこともあり、彼はジャイエから多大な影響を受けたという。
「私がいつも心に留めているのは『良いワインは若くても古くてもずっと良いワインだ』というアンリ ジャイエの言葉です」と語るクリストフ ペロ・ミノ。良いワインになるために、ワインを寝かす必要はない。時間を経てからしか飲み頃に達しないというのであれば、それは時間をかけて欠点を消していくことだという。だから、良いワインは若くてもすでに良い状態であるべきである。語るのは簡単だが、これを実現できる造り手はどれだけいるだろうか。恐れずにペロ・ミノの若いヴィンテージのワインを試してみてほしい。彼のワインがジャイエの言葉が示すその高みに達していることがお分かりいただけるだろう。
ペロ・ミノのワインは若いヴィンテージであったとしても、すでに身体に浸み込むかのようなフィネスが感じられる。しなやかかつ透明感にあふれ、液体の全てにピントが合った極上のピノノワールである。ブルゴーニュのひとつの到達点と言っても言い過ぎではないだろう。それほどまでの高みにあると感じた訪問であった。